お母様のようなケースでは、成年後見制度による手続きをとることも一つの方法です。
成年後見制度のうち任意後見制度は、本人が健康で判断能力が十分なうちに将来認知症等で判断能力が不十分となった場合に備え、あらかじめ、任意後見契約により任意後見受任者を指名しておき、本人の財産管理について、将来認知症等障害が発生した場合でも可能な限り本人の意思が反映されるようにしておくものです。
任意後見受任者は親族でも指名することが可能で、本人との間で公正証書を作成し、公証人の嘱託によりこの旨の登記がなされます。
本人の判断能力が衰えて、任意後見事務を開始する必要が生じたときは、任意後見受任者や親族等が、本人の同意を得て、家庭裁判所に任意後見監督人選任の申立を行ない、家庭裁判所がその選任を行うと、そのときから任意後見受任者は任意後見人となり、任意後見契約に定められた仕事を開始することになります。
管理費等の滞納があった場合、管理組合は、売買により新しい所有者になった買主に対してもその管理費等の滞納金を請求することができます。
宅建業法では、宅建業者に対して「管理費の額、修繕積立金の額及びそれらについて滞納がある場合には滞納額」を説明することを義務付けています。
売主業者や媒介業者が滞納額について説明していなかった場合、業者は宅建業法上の義務違反を問われるとともに、民事的な責任を負うことになります。
競売による落札の結果、落札者(買受人)は新たな所有者となります。前所有者との賃貸借契約による賃借人が住んでいる状況と判断しますが、この賃貸借契約の締結時期がいつかによって賃借人が入居できる期間も違ってきます。平成16年3月31日以前の契約締結であればその契約期間終了までは賃借人は入居を継続できます。平成16年4月1日以降の賃貸借契約ならば「建物明渡し猶予制度」として買受時から6か月の明け渡し猶予期間が設けられ、その間は賃借人は入居できることになります。(民法395条)
早期に退去を求めるのであれば、賃借人と話し合いで決める必要もあります。
競売不動産は、通常は価格が市場価格よりも安く設定されていることがメリットの1つですが、事前に物件内部が見られない、瑕疵担保責任を追及できない、占有者がいる場合は立退き交渉が必要等のデメリットもあります。このような競売不動産の調査、入札手続き、立退き交渉等を買主に代わって行うことが競売代行と呼ばれるもので、不動産業者が営んでいることが多いようです。競売代行業は不動産の媒介ではないため、業者との契約内容(業務の範囲や費用負担、手数料など)に注意が必要です。
報酬請求権の発生する時期は、当該媒介に係る売買契約が成立したときとされていますので、業者には報酬請求権はあります。
しかし、媒介報酬は、宅地建物の売買、賃貸及び交換の契約が成立した際に半額、代理又は媒介の責任を完了したときに残額を受領するよう求める、国土交通省(建設省)による指導(昭和27年通ちょう)もあります。
媒介業者の引渡し業務を完全に履行させる趣旨ですので、不動産業者と話し合い、お互いが安心な取引にすることも大切です。
依頼者が不動産業者に特別に依頼した内容として
(1)特別に依頼した広告の料金
(2)特別に依頼した遠隔地における現地調査等に要する費用(事前に依頼者の承諾のあるもの)
上記以外の情報登録料、通常の広告、物件の調査等のための費用は、依頼を受けた不動産業者の負担になります。
したがって、事前に依頼者が承諾した(1)、(2)の費用がなければ、支払う必要はありません。
媒介業者が購入する買主を探すことができずに売却できなかったとしても、それを理由に媒介業者に対して、物件の買取りや損害賠償を請求することはできません。
売却の依頼を受けた媒介業者には、契約の相手方を探すなどの積極的な努力義務はありますが、かならず契約を成立させなければならない義務まではありません。
売却できなかった理由を冷静に分析して、売却価格の見直しも含めて対応策を今一度検討することも早期売却につなげる方法でもあります。
媒介手数料は成約報酬ですから契約が成立して支払うことになりますが、媒介業者の責めに帰すことができない事由によって媒介契約が契約期間中に解除されたときは、媒介業者は依頼者に対して媒介契約履行のために要した費用を請求することができることになっていますが、その額は約定報酬額を超えることはできません。
なお、媒介業者が、費用償還請求をするときには、明確な費用明細ならびに領収書等が必要になります。
売買契約が成立した場合には、その後、専ら契約の当事者間の問題でその契約が解約になったとしても、媒介業者の報酬請求権は失われないと解されています。したがって、媒介業者は、媒介手数料の残額を請求することができることになりますが、媒介報酬の請求について争いになると、裁判所は、手付解除により契約が解除されたことで、当初予定していた取引が完了せず、媒介業者の媒介業務の量が軽減されたこと等を理由として報酬全額の請求までは認めないことも多いようです。
半金のみとする媒介業者も多いかと思いますが、実務では媒介業者と話し合いでの解決となります。
宅建業者が依頼者から受け取ることができる媒介報酬の額は、宅建業法の規定に基づき、国土交通大臣が定める告示により、以下の表の合計額が上限として定められています。
売買代金が200万円以下の部分 媒介報酬額は5.4%以内の額
売買代金が200万円を超え400万円以下の部分 媒介報酬額は4.32%以内の額
売買代金が400万円を超える部分 媒介報酬額は3.24%以内の額
取引額が400万円を超えるときは、「(消費税抜きの売買代金×3%+6万円)×1.08」で簡易計算することができ、実務ではこの簡易計算による方法が用いられています。
上記の方法で求められるのは上限額であり、実際に支払う媒介手数料は、その範囲内で、媒介業者との話合いで決めることになります(媒介契約締結のときに約定します)。